メモ

もしも、一次産品価格の水準が1973年のものに等しければ、1985年の米国の貿易赤字は、現実の1500億ドルではなく、それよりも30%少ない1000億程度になっていたであろうし、米国の対日赤字は500億ドルはなく350億ドル程度に落ち着いていただろう。またラテン・アメリカなどの一次産品国の経済悪化がなければ、米国の交易条件は16%ほど現実よりも改善されていたであろう。日本の貿易黒字も20%は小さかったであろうし、ラテン・アメリカの債務返済危機なども生じなかったであろう。

このような一次産品経済の不況がここ当分続くと見なす方が妥当であるとすれば、安い資源依存型経済の日本はますます有利に、資源生産国の米国の不利はますます顕著になるであろう。しかし、それよりも深刻なのは、一次産品生産のみに依存する第三世界であると思われる。伝統的な一次産品依存型経済の不利さを強調していたのがラテン・アメリカのプレビッシュをはじめとした国連エクラ(ECLA)のメンバーであり、それがのちにUNCTADの結実し、NIEOを生み出したが、1970年代のNIEsの台頭以後は急速に色あせてしまったものである。しかし、今後は再びこの路線が息を吹き返すものと思われる。

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